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ITTC2011の出席報告 ~おまけ~

おまけ1: 操縦性委員の人物評

 ここでは,操縦性委員全員の人となりについて書いてみたい。

 南米生まれの陽気さと,ドイツ人の几帳面さを持つ委員長のアンドレスは,リベラルな思想の持ち主である。いつかどこかでのMC会議の後の夕食時に,セクレタリーのフランスとオランダ王室と皇室の違いのような話をしていたところ,「未だ王制を持つ国があることが信じられない」旨のつぶやきがあり,アンドレスは俗に言うリベラル派であることを認識するに至った。このようなリベラルな思想のためか,委員みんなの話し合いや合意を大事にするところがあり,このやり方は,委員みんなの結束を高める上で効果があったように思われる(一つ前のMCが独裁的な色彩が強かったので,特にそう思われた)。とはいえ,アンドレス自身は,いわゆる「CFD帝国主義者」であることに疑いはない。「CFD帝国主義者」とは私の造語であり,CFDはあらゆる流体問題を解決できると信じ,古典的な流体力学の考えを無視もしくは軽視する傾向を持つ人を指す。このように書くと,アンドレスを非難しているように聞こえるかもしれないが,MCの運営において,委員長としての適切なリーダーシップを発揮し,委員の持ついろいろな意見を採り入れて,会をうまく主導したと思う。

 セクレタリーのフランスは,オランダMARINで操縦性関係業務の統括を行う地位にいる若手のホープである。まだ年は若く(たぶん40代前半),日本のセンスから言えば若造の部類に入ると思うが,自国(自組織)に有利となるような政治的な駆け引きができ,議論の落としどころも見つけることができるやり手である。ただ,操縦性自身についての学問的な知識が十分でないことが玉に瑕である。フランスは,次期のMC委員長となることが決まり,あまりCFDに偏らないバランス良いMC運営ができるものと期待される。

 デンマーク人のクリスチャンは,MCに参加した当初はFORCE(旧DMI)に在籍していたが,途中から海洋関係の民間会社に転職したにもかかわらず,MC委員を途中でやめることなく続けた律儀な男である。また,アイオア大学のフレッドスタンが主催したSIMMAN workshopの実質の幹事であり,いろいろ苦労したであろうことが想像できるものの,それを感じさせなかった好男子である。クリスチャンの良さはその誠実さと温厚な性格にあり,皆から信頼されていた。水槽関連業務から離れたことが悔やまれる。

 イタリアINSEANのリカルドはCFDの専門家であり,委員長アンドレスの子分という感じであった。会議で発言することはあまり無かったが,その愛嬌からかMCのマスコット的存在であった。ブラジルでのITTC本会議では,早くからリオに入り,しっかりとバカンスを楽しむ姿勢はさすがイタリア人であった。

 ブラジル代表のカズオは,名前から分かるように,日系のブラジル人である。日本への留学の経験もあり,ほぼ完璧な日本語を話せるので,私としては,日本語で会話のできる話し相手ができ幸運であった。カズオの興味は,海洋関係の問題,例えば,係留時の振れまわりの問題等にあり,その意見を尊重して,MCの報告書では,低速時のモデルに関する章を立ち上げることになった。

 韓国代表のサンヨンは,海技研の所長に就任した茂里先生(当時,広大教授)のもとで学位を取った知日派である。日本語もできるので,私が英語で話すのが面倒なときには,日本語で会話をしていた。従って,日本語ができるのは,カズオ,サンヨン,私と,3人もいることとなった。サンヨンは,大勢に流され易く,その上少し天然が入る。操縦性を考える場合に重要な問題である「模型船・実船の相関」についても,思いこみと思われる意見を言い,そんなこと言って大丈夫なのかとはらはらする面があった。

 ザオジンは,中国の大人を装っているのか,会議では全く発言が無く,いないに等しい存在であった。その理由の一つは,英会話があまり得意ではないことが挙げられるかもしれない。日頃は温厚であるが,急にテンションが上がるときがあり,「中国人だ」と認識させられた。ザオジンはドイツハンブルグ大学に留学していたこともあり,アンドレスとはドイツ語で会話していた。

 さて,最後に日本のヒロであるが,会議ではあまり意見を言わないのに,妙なところでは大勢の意見に従わないKYなやつと思われたに違いない。意見に従わないときは,大概,日本のMMG modelに反するような意見が出たときである。操縦性流体力の計測に関する多数派はPMM派であり,日本が得意とするCMT派は少数派であった。また,「CFD帝国主義」への嫌悪感を隠さなかったので,アンドレスから見れば,嫌な奴だったに違いない。そのためか,面倒な仕事(制限水域関連の問題)を押しつけられたようにも思う。ただ逆に考えれば,学問的に難しい面倒な仕事も,ヒロならばなんとかするかもしれないという信頼の裏返しだったかもしれない。そう考えることにしよう。

左から,ザオジン,ヒロ,アンドレス,フランス,リカルド,クリスチャン,サンヨン,カズオ

おまけ2: サンバはうるさい!

 バンケットでは,ブラジルならではの趣向ということで,サンバのバンド演奏+踊りの余興があった。私が持つサンバの印象は,「リズミカルな激しいボサノバ」もしくは「リズミカルなジャズ」という「ちょっとおしゃれな音楽」であった。が,実際には全く違っていた。実際のサンバのイメージは,「アフリカ現地人がたたく太鼓」もしくは「日蓮宗の儀式でたたかれる太鼓」に近い。サンバというものは,明らかに,アフリカからのものですね。この激しいリズムと大音量の陶酔感は,「ヘビメタコンサート」もしくは「長崎鐘楼流し」でのそれと同じである。この陶酔感故にパーティも一気に盛り上がるのである。静かな食事の場であったバンケットは,一気にダンスパーティの場へと化し,ITTCに参加していた紳士淑女もみんな踊り出すのであった。

バンケットの一コマ: サンバのおねーちゃんと一緒に写っているのはAC委員の川北氏