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深水域ならびに浅水域における2軸2舵フェリーの水槽試験報告

海上輸送システム研究室 奥田隆輔

2018年8月27日~9月7日までの約2週間,茨城県神栖市にある水産工学研究所(以下: 水工研)の施設をお借りして,2軸2舵フェリーの水槽試験を実施しました。その概要を報告致します。

実験で使用させていただいた施設は,海洋工学総合実験棟と波浪平面水槽実験棟の2つの水槽です。前者は深水域の試験時に,後者は浅水域の試験時に使用しました。特に前者は長さが60m,幅が25mもあり,広島大学の曳航水槽と比較すると2.5倍も幅が広く,自由航走模型試験を行うのに適しています。

今回の実験は主に,様々な船速や水深で旋回試験,Zig-Zag試験,バウスラスターに関連した試験,そしてCMT(Circular Motion Test)試験などを実施しました。CMT試験以外は全て自由航走模型試験です。船の位置計測は船首とミドシップ付近に設置された2つのプリズムを陸上のトータルステーションで追尾することで,また回転運動の計測は模型船に設置されたジャイロを使用して行われました。計測値は無線によって陸上のパソコンにデータが送信される仕組みとなっています。

次に,使用した模型船を紹介します。長さが約3m,2つのプロペラと舵を備えており,船首部には船体に横向きの力を与えるバウスラスターと呼ばれる装置が搭載されているフェリーの模型を使用しました。図1に模型船の写真を載せます。

図1: 本実験で使用した模型船

1週目の前半は,深水域での自由航走模型試験を実施しました。実船で8kn,15.6kn相当の船速で,先程述べた試験を行いました。私自身,自由航走模型試験を目にするのは初めてだったので,合図とともに模型船がカタパルトから勢いよく発射され,自動で動いている様子を見てとても感動したのを今でも覚えています。

図2: 模型船とカタパルト

図3: 自由航走模型試験の様子

1週目の後半は,CMT試験を実施しました。この試験では,模型船を旋回運動させ,その時の船体に働く力を計測することによって,操縦流体力を求めることができます。広島大学でもCMT試験を実施することができますが,前述の通り水工研の水槽は広島大学の水槽よりも横幅が広いため,より様々な試験条件で実験することが可能です。

2週目は,模型船を波浪平面水槽実験棟に移動させて浅水域の実験を行いました。水深は21.8cmと17.5cmの2条件で,実験内容は1週目の自由航走模型試験と大きくは変わりませんが,15.6knの試験は実施せず,また今回新たに岸壁模型を設置し離桟試験を実施しました。

図4: 離桟試験の様子(横長のアクリルが岸壁模型)

また,2週目の途中からは隊長の仕事も経験させて頂きました。初めてのことだらけで不安しかありませんでしたが,鈴木さんの手厚いフォローのおかげでなんとか実験を乗り切ることができました。しかしながら,私は水工研での立派な隊長には程遠く,まだまだ半人前ですので,今後も勉強と経験を積んで精進して参りたいと思います。

最後に,今回の実験に関して様々なサポートをしていただいた水工研の松田さんをはじめ,安川先生,佐野先生,平田先生,そして共に実験に励んだ鈴木さん,金井さん,Amirulさん,武井君,藤原君にはこの場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。