IHI角水槽における拘束模型試験
海上輸送システム研究室 加山靖高
2012年2月21日~3月2日,横浜市にあるIHI(石川島播磨重工業)技術研究所の角水槽を用いて,操縦流体力を計測するための拘束模型試験を行いました。その概要を報告します。
近年は船の輸送効率向上のため,船の肥大化が進んでおり,今ではCb=0.85の船は珍しくありません。しかしながら,船の肥大化が進むと,船の針路安定性が損なわれることが良く知られており,どの程度までの肥大度であれば許容できるのか,今のところ,明確な指針はありません。肥大度を系統的に変化させた場合の針路安定性に関するデータが取得されていないためです。
そこで,昨年度,Cbが0.81,0.84,0.87と系統的に変化させた船を独自の計画し,縮尺模型船を作成しました。今回,この3隻の模型船を用いて,操縦流体力を把握するための拘束模型試験を実施しました。水槽試験に使用した模型船の1つを図1に載せます。この試験は,Circular Motion Test(CMT)と呼ばれ,模型船を指定した船速,斜航角,回頭角速度にて旋回させ,そのとき模型船に作用する流体力(前後力,横力,回頭モーメント)を計測するものです。広島大学の水槽でもそのような試験は可能ですが,水槽幅が狭いという設備の制約から,大舵角時の旋回運動に対応する試験はできません。そこで,IHI技術研究所の角水槽を使わせてもらい,大舵角時の旋回運動を含めた,幅広いレンジにおける流体力のデータを計測することとしました。
図1: 使用した模型船の1つ
図2にIHIの角水槽の様子を示します。この水槽の幅は30mもあります(広大の水槽幅は8mなので,約4倍大きい)。広島大学の水槽とは比べものにならないくらいに大きいため,初めて見た時は,その大きさに圧倒されました。またIHIでの水槽試験は無人化された曳引車で試験を行っており,それにも驚きました。
図2: 幅30m,長さ70mのIHI運動性能水槽(通称: 角水槽)
水槽試験の様子を図3に示します。試験結果は,現在解析中ですが,これから本格的に実施する修士研究における貴重なデータとなります。
図3: 水槽試験の様子
(※ 無人化された副台車の下に模型船が取り付けてあります。)
今回のIHI角試験での体験では,様々な刺激を受け,将来について考えさせられる良い機会になりました。貴重な経験をさせて頂いた安川先生,水槽試験について種々御指導頂いている佐野先生,平田先生,実際に横浜に赴き,実験を手伝って頂いた海上輸送研究室の先輩方(池添さん,國武さん,左田野さん)に感謝します。夜は,中華街やみなとみらいなどに行き,横浜の夜の街を楽しむことができたことも付け加えておきます。
最後に,私が試験の準備をしている様子の写真を載せて,終わりとします。
図4: 試験準備中の筆者