2012年度「日本船舶海洋工学会賞(論文賞)」を受賞
海上輸送システム研究室(准教授) 田中 進
2012年5月17日に,公益社団法人日本船舶海洋工学会より,「日本船舶海洋工学会賞(論文賞)」を受賞しました。受賞論文は,日本船舶海洋工学会論文集第13号に発表した論文「上昇する錨鎖の横振動について」です。
写真1: 受賞者
(左から常石造船の関広史G長,半田晃士G長,広島大学 田中(進),平田法隆助教)
本論文は,船がアンカー(いかり)を下ろす時に,チェーンロッカーと呼ばれるアンカーチェーンの格納庫の中で,チェーンが異常に暴れて格納庫の壁を損傷させる現象について,実験的,理論的に解明したもので,広島大学と常石造船が共同で研究した成果の一部を纏めたものです。
アンカーチェーンが異常に暴れてチェーンロッカーの壁を損傷させる現象は,建造船でごくまれに起こるトラブルです。その現象解明のため,種々の条件を与えて何度も繰り返して実験できるように,実船と力学的に相似となるような模型試験機を開発して実験データを収集しました。 続いて,上昇する弦の理論に基づいて実験データを分析したところ,チェーンの異常な暴れは,チェーン下端の左右揺れの振動数がチェーン固有の振動数に一致することによって生じる共振現象であることが分かりました。さらに,このような共振回避のための条件について検討を行いました。詳しくは,日本船舶海洋工学会論文集, 第13号, pp.249-256, 2011年6月をご覧下さい。
造船所では同型船をシリーズで多数建造するため,一つのトラブルが大きな影響を与えかねません。新しく設計した船について,事前に性能を評価してトラブルを防ぐことが,建造船の品質確保,品質向上を図る上で重要となります。当研究室では,今後も船や海洋機器の品質や付加価値の向上に貢献するよう,基礎研究,応用研究に取り組む予定です。
写真2: アンカーチェーン模型試験機
写真3: 実験中の模型チェーンの揺れ(画像計測画面)
図: 上昇するチェーン横揺れの解析座標