ビルジキールが船の操縦運動に及ぼす影響に関する研究
海上輸送システム研究室 山﨑勇介
2014年8月24日~9月13日,茨城県にある水産工学研究所の角水槽を用いて,平水中におけるコンテナ船の操縦運動に及ぼすビルジキールの影響を調査するための自由航走模型試験を行いました。その概要を報告します。
一般にビルジキールはロール運動の減衰に有効ということが知られており,実際にほとんどの船舶に取り付けられています。しかし,ビルジキールが船の操縦運動にどのような影響を及ぼしているかというデータは少ないのが現状です。そこで,本実験では,平水中においてビルジキールの有り無しそれぞれで旋回運動やzig-zag運動等の操縦運動特性を把握し,その特徴を明らかにします。
平水中で自由航走模型試験を行いました。陸上からのリモートコントロールにより,模型船のプロペラと舵を制御し,ジグザグに走らせるzig-zag試験と,舵角一定で旋回させる旋回試験を実施しました。広島大学の水槽では,水槽幅が狭く,旋回させることができません。そこで,水産工学研究所角水槽を使わせてもらい,保針性能,旋回性能を調査しました。図1に試験で使用した模型船を載せます。長さは約3mです。
図1: 使用した模型船
図2に水産工学研究所角水槽の様子を示します。この水槽は長さ60m,幅30m,深さ3.2mあり,水槽の面積は広島大学水槽の倍以上もあります。幅が広島大学の3倍以上もあり,普段,実験を行っている曳航水槽より大きく驚きました。
図2: 長さ60m,幅25m,深さ3.2mの角水槽
図3には実験で使用した発射装置を載せます。この装置は,船をまっすぐに発射し,初速を一定にするためのものです。おもりを落とすことによりその力で発射します。昨年の発射装置を改良し,さらにその有効性が確認されました。
図3: 発射装置
図4に水槽試験の様子を示します。模型船に取り付けたプリズムをトータルステーションが自動的に追跡し,模型船の位置を計測します。模型船には,何もケーブル類がつながっていないため,自由に航走できます。計測されたデータは無線でパソコンに送り,逐次データの解析をすることができます。
図4: 水槽試験の様子
水産工学研究所の角水槽という大学とは違った設備を利用させていただき,大変すばらしい実験を行うことができました。水産工学研究所の松田さん,寺田さんには長期にわたって大変お世話になりました。深くお礼申し上げます。貴重な経験をさせて頂いた安川先生,試験を手伝って頂いた平田先生,また,海上輸送システム研究室の米舛さん,網井さん,松本さん,山下さん,奥田さん,濱崎さん,井手くん,堀くん,藤村さん,森くん,浜本くんに感謝します。ありがとうございました。最後に試験に励む筆者の写真を載せて,終わりとします。
図5: 試験に励む筆者(左)と網井さん(右)