運河を航行するコンテナ船の水槽試験
海上輸送システム研究室 奥田隆輔
近年,船の大型化が進み,長さ400mを超えるようなサイズのものまで誕生している。そのような大型船が,運河などの狭水路で事故を起こし,水路を塞いでしまうと復旧に莫大な時間を要してしまうことは容易に想像がつくだろう。今年3月,スエズ運河で400m級のメガコンテナ船が座礁し,運河が通行できなくなり世界の海上輸送に大打撃を与えた事故は記憶に新しい。このような海難事故を防止することは,安定した海上輸送を確保することはもちろん,船員の安全や環境保全にもつながるため,運河での事故防止策を確立させることは世界的にも急務であるといえよう。そこで,そのような運河での事故を防ぐべく,船が操船不能状態に陥るような場合を未然に予測し,その防止法を確立させるべく研究を開始した。
この度,九州大学運動性能試験水槽において,コンテナ船に作用する流体力に及ぼす水路壁の影響を把握すべく,水槽上に岸壁模型を設置し,運河を模擬した水路を作り,そこを模型船が航行するときの船に働く流体力を計測する機会を得た。模型岸壁の設置の様子を図1に示す。設置した水路内において模型船を曳引し,作用する力を計測した。ここで,使用する船類はスエズ運河で事故を起こした船と同じコンテナ船である(ただし,船型や船の主要目は異なる)。水路幅や水深,船の斜航角(進行方向に対してどの程度傾いているか)を変化させながら,その時に船に作用する力を計測し,その特徴を把握した。
図2に,実際の試験の様子を載せる(このページの下部にはそのビデオも載せています)。
図1: 水槽内に岸壁模型を設置している様子
図2: 水路を航行するコンテナ船模型
試験は始まったばかりであり,現時点ではまだまとまった成果を示すことはできないが,得られた水槽試験データをもとに,風圧下でのコンテナ船の操船不能状態を予測する方法を開発する予定である。さらに,運河内での事故を防止するような手法を確立させたいと考えている。検討を続けていきたい。
最後に,水路における水槽試験の実施に当たり,角水槽使用の便宜を図っていただいた九州大学古川芳孝先生ならびに茨木洋先生に感謝の意を表します。
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