「プッシャー・バージに関するワークショップ」の報告
海上輸送システム研究室(教授) 安川宏紀
2013年10月15日(火),広島大学工学部A2-231号会議室において,「プッシャー・バージに関するワークショップ」を開催しました。プッシャーとは押船,バージとは荷を運ぶ艀(はしけ)のことであり,図1に示すように,水面上において,プッシャーがバージを押して,物を運びます。欧米ではこの方式による河川輸送が広く行われており,最も効率の良い輸送手段と言われています。このたび,このような効率の高い輸送システムを勉強すべく,「プッシャー・バージに関するワークショップ」を企画しました。
図1: プッシャー・バージの模型船(連結部左がバージ,右がプッシャー)
ワークショップでは,次の3件の講演がありました。
最初の講演をしていただいたタイセイ・エンジニアリングの山口琢磨さまは,プッシャー・バージにおけるタグ・バージ連結機械の開発によって,2010年米国の交通・運輸技術に関係した6学会(自動車協会,機械学会,造船造機学会,航空宇宙学会,電気電子学会,土木学会)から,Elmer A. Sperry賞を受賞されたその道の大家です。ちなみに,日本人でElmer A. Sperry賞を受賞したのは,1966年,東海道新幹線の企画・開発に関連した3氏(大石重成氏,島秀雄氏,藤井松太郎氏)だけです。
プッシャー・バージシステムの歴史から,その後,海上で使えるようにするための新しい技術開発について,興味深い話をしていただきました。図2に講演の様子を示します。80歳を越えるお年とは思えない溌剌とした,そして,何としても物にするという執念を感じるような技術開発に関する話でした。我々若者はもっと頑張らなくてはダメだと痛感させられました。参考までに,ワークショップで配布された資料(プッシャー・バージについて [PDF] ,海のプッシャー・バージ船団の特性 [PDF] )をUPします。
図2: 山口琢磨氏の御講演の様子
※ さらに,山口さまを広島大学の水槽にお連れした時の見学記事を,こちら(水槽Facebook)にUPしております。
2番目の講演は,私(安川)が行いました。図3に講演の様子を示します。欧米では,バージは1隻に限ることは無く,数隻から十数隻までのバージ船団を構成して,それをプッシャーで押して運用することが通常行われています。これにより,貨物に見合う輸送効率の最適化を図ることができます。講演では,どのような船団形態が良いのか,広島大学曳航水槽において実施された水槽試験結果を基に,抵抗性能と操縦性能の見地から,議論しました。参考までに,ワークショップで使用されたパワーポイントのコピー(プッシャー・バージ船団の抵抗性能と操縦性能 [PDF] )をUPします。
図3: 安川の講演の様子
3番目の講演は,広島大学名誉教授小瀬邦治先生にお願いしました。図4に講演の様子を示します。「プッシャーバージシステムとその課題」と題した講演では,今後,インドネシアを代表として,東南アジアでのプッシャーバージの使用が増えるであろうこと,その際,燃費の優れたプッシャーバージの開発が必要であること等を力説されました。さらには,日本ではあまり使用されていない輸送形態であるため,プッシャーバージのことを良く理解していない部分があり,一層の勉強が必要であることを述べられました。このようなワークショップ(勉強会)がまだまだ必要かもしれません。参考までに,ワークショップで使用されたパワーポイントのコピー(プッシャーバージシステムとその課題 [PDF] )をUPします。
図4: 小瀬先生の御講演の様子
最後に,ワークショップ参加者との記念撮影の写真を図5に示します。お忙しいにもかかわらず,本ワークショップに参加いただいた,常石造船,新潟原動機,寺岡商事の方々に感謝致します。どうもありがとうございました。
図5: ワークショップ参加者との記念撮影