「第2回プッシャー・バージに関するワークショップ」の報告
海上輸送システム研究室(教授) 安川宏紀
日本ではあまりなじみの無いプッシャー・バージ輸送システムですが,最も効率の高い輸送手段と言われており,米国,欧州,南米,中国等全世界で広く使われています。このような効率の高い輸送システムを勉強すべく,2013年10月,広島大学において,「プッシャー・バージに関するワークショップ」を開催しました(そのときの開催報告は,こちらを参照)。
前回に引き続き,2014年12月22日(月),「第2回プッシャー・バージに関するワークショップ」を,広島大学工学部A2-231会議室において開催しました。ワークショップでは,次の4件の講演がありました。
最初の講演をしていただいたタイセイ・エンジニアリングの山口琢磨さまは,プッシャー・バージにおけるタグ・バージ連結機械の開発によって,2010年米国の交通・運輸技術に関係した6学会(自動車協会,機械学会,造船造機学会,航空宇宙学会,電気電子学会,土木学会)から,Elmer A. Sperry賞を受賞されたその道の大家です。前回に引き続き,今回も講演をお願いしました。今回のタイトルは,「プッシャー・バージの性能のもつ諸問題」ということであり,推進性能や保針性能について,今までの御経験を交えて,話しをしていただきました。近年では,やはり推進性能の一層の向上が課題であり,プッシャーとバージの連結部にできる段差等から生じる抵抗増をいかに減らすかが課題のようです。図1に講演の様子を示します。80歳を越えるお年とは思えない溌剌とした発表に,我々若手も大いなる刺激を受けました。参考までに,ワークショップで配布された資料(プッシャー・バージの性能のもつ諸問題 [PDF] ,プッシャーバージ技術の発生,発達と現状 [PDF] )をUPします。
図1: 山口琢磨様の御講演の様子
2番目の講演は,グローカルジャパン(常石造船の関連会社)の藤井信昭様にお願いしました。図2に講演の様子を示します。常石造船は,南米パラグアイにプッシャー・バージの造船工場を建て,既にバージ等の設計・建造が始まっております。工場建設の苦労,プッシャー・バージの設計・建造に関する特徴,留意点などについて,詳しいお話しがありました。我々が知っている船の世界をとは大きく異なるようです。今回,実際に現場で経験されたことを聞くことができ,日本に居ては分からないことばかりで,大変有益でした。参考までに,発表で使われたパワーポイントのコピー(PBSワークショップ資料(glocal japan)[PDF] )をUPします。
図2: 藤井信昭様の御講演の様子
3番目の講演は,広島大学大学院修士1年の奥田晃生君が行いました。図3に講演の様子を示します。「CFDによるプッシャー・バージ周りの流場解析」と題した講演では,openFOAMと呼ばれる汎用CFDコードを用いた,直進航行するプッシャー・バージ周りの粘性流場解析を行った結果について発表しました。バージの船団数を1隻から8隻まで変えた計算を行っていることが大きな特徴です。抵抗値の計算結果は,水槽試験結果とおおよそ一致しています。プッシャー・バージ船団の抵抗低減用の設計ツールとして,このCFDコードは有益なようです。参考までに,発表で使用されたパワーポイントのコピー(PBSワークショップ発表(奥田)[PDF] )をUPします。
図3: 奥田晃生君の講演の様子
4番目の講演は,広島大学佐野将昭助教が行いました。図4に講演の様子を示します。「河川輸送への交通流シミュレータの適用に関する初期検討」と題した講演では,インドネシアの河川を念頭におき,輻輳する水域(いろいろな船が航行しているものとします)を,プッシャー・バージ船団やタグによって曳航されるバージがどのように航行するのか,自動避航モデルを組み込んだ力学モデルによる船の操縦運動のシミュレーション計算を行った結果を示しました。曳船・被曳船系は変針すると振れ回りが起こり,加えて減速時の安全航行が難しく,それと比較するとプッシャー・バージの方が安全航行が可能であることが示されています。参考までに,発表で使われたパワーポイントのコピー(PBSワークショップ発表(佐野)[PDF] )をUPします。
図4: 佐野先生の講演の様子
最後に,ワークショップ参加者との記念撮影の写真を図5に示します。お忙しいにもかかわらず,本ワークショップに御参加いただいた方々に感謝致します。この方面の勉強をもっと続けたいと思っていますので,次をまた企画します。
図5: ワークショップ参加者との記念撮影